塀の中の接着剤ーー➁


刑務所の中の袋貼り


糊、接着、作業、内職となってくると頭にパッと浮かぶのは、江戸時代の浪人が長屋でばん傘を貼る絵や、内職での袋貼り、マッチ箱貼りなどで、当時は、糊を使った代表的な内職だった。


労役作業の袋貼りは、よく言われてはいるのだが、具体的に・・・・となると、書かれているものは少ない。
 
図鑑 日本の監獄史」にも、ただ一つの記述しかない。明治時代の洲本懲治場で単純作業と混じって、封筒貼りを行った少年がいたことが書かれている。
 

 
 
労役作業の封筒貼りが詳しく書かれているのは、島木健作氏の小説であろう。小説 「再建」「転落」
 
島木健作は昭和3年から5年間、治安維持法違反で獄中生活を送っているので、自らの体験に基づいた記録であろう。
 

 

 
獄中で貼るのはハトロン紙の封筒、獄中のノルマは4550枚、
初めは3000枚にとても達しえなかったが、馴れる
に従ってぐんぐん手があがり、ノルマを
軽く達成、ついには1日9千枚
という驚異的な数字を
達成する。
 
 
今なら機会貼りで数分もかからずに貼れる9千枚も、家庭内職で寸暇を惜しんで貼って、千枚がやっとの時代に、いかに大変だったかがわかる気がする。
 
 
特筆すべきは、モールス・ルプランのルパンものの一つ「八一三」にルパンが捕えられて、獄中で封筒貼りをさせられたというのがある。
 
その結果、材料の包の番号が毎日同じであることがわかり、
その番号の担当者を買収することによって、
まんまと脱獄に成功するのである。
 
 
 
最後に、
第二次大戦中のフランス、泥棒がレジスタンスの闘志などと共に刑務所に入れられ、軍需物資らしき袋貼りをさせられる。
 
ところが、食糧不足の折り、アーモンド香のする糊は一番の御馳走で、
みんなで食べたそうな。すると、糊の中の防腐剤のせいで

中毒者が続出する。
糊を食することを厳禁す
という掲示板が張り出されたそうな。
 
阿部譲二の「塀の中の懲りない面々」にはショッピングバッグを貼るところがあり、ノルマは1日150枚だという。
 
島木健作の4550枚とずいぶん違うが、袋の大きさと時代の差なのであろうか

出典:接着剤のはなし

 

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